万が一に備えた、ペットの為の信託とは?
2016-02-26
「犬のための信託」
あまりなじみのない言葉ですが、ご存知でしょうか?
「自分に万が一のことがあったとき、信頼できる人に愛犬を託したい。」という飼い主として当たり前の希望と不安を解消するために、最近注目されている仕組みなんですよ。
信託ってなに?
信託とは、文字通り 「信頼できる人に財産を託して管理してもらう仕組み」のことで、信託法で規定されています。
この仕組みを飼い犬のために活用するということは、つまり「飼い主(信託者)」が「信頼できる人(受託者)」に飼い犬の飼育費用として「財産(信託財産)」を託して飼い犬の世話してもらうということです。
信託のメリット
その1:飼い犬用のお金を確実に残せる
遺言でも「飼い犬用の費用」として財産を残すことは可能ですが、相続財産の一部として分割されるため、相続人同士の争いの元になったり目減りしたりする場合があります。
信託ならば最初から他の財産と分けて管理されるため、このような心配がありません。「飼い犬用に託した財産」は相続財産にならないため争いになりにくく、また希望の額を確実に飼い犬に残すことができます。
その2:義務を課すことができる
遺言でもペットの世話とその費用を希望の人に託すことができますが、相続人にはなんら義務を課すことはできず、希望した通りに犬の世話をしてくれるのか不安が残ります。
一方信託では、託された人は
・忠実に事務を遂行する。
・善良なる管理者としての注意を払う。
・信託財産を他の財産と分離して管理する。
といった義務を課されるため、希望した通りの世話が期待でき安心です。
その3:計画的な利用ができる
遺言は「死んだ後」初めて有効になりますが、信託は「生きている間」も「死んだ後」も利用できます。そのため、例えば「入院したとき」 「要介護○級になったとき」というようにあらかじめ条件を決めておけば、生きている間でも犬の世話を託すことができます。
信託のデメリット
その1:誰に託すかを決めるのが難しい
ペットのために信託する場合、飼い主にとっても飼い犬にとってももっとも適切な人に託すことが大切です。しかしこの見極めが一番難しいといってもよいでしょう。
財産管理について信頼でき、なおかつ飼い犬のことをかわいがってくれて、希望の世話をやってくれる人・・・といわれても、なかなか思いつかないと思います。
よく考え、家族や周囲の人に相談して決めることが大切です。実際に何日か犬を預けて、その世話の様子などを観察してもよいでしょう。
その2:どのくらいの財産を残せばよいのかわからない
飼い犬犬の世話に必要な費用を信託財産として託すことになりますが、この算出はとても難しいです。
まず飼い犬の寿命がわからないですし、思わぬ医療費もかかります。病状によってはエサも獣医師の処方食になる場合もあり、その他ハーネス代・トリミング代など実際いくら必要なのかは誰にも算出できないのです。
どのくらいの費用を信託するのか、足りなくなったときに誰が飼い犬用の費用を出すのか、逆に余ったときにはどうするのかなど、信託者・受託者だけでなく家族や相続人も交えて話し合っておく必要があります。
いかがでしたか?自分に万が一のことがあった場合に犬をどうしたらよいのか不安な方は、ぜひ信託の活用を検討してみてください。
信託はオーダーメイドな仕組みで、個別の事情にあった細かな設定が可能です。例えば受託者を監督する人を設定することなどもできます。弁護士や行政書士などの専門家や銀行の窓口などで相談してくださいね。
執筆:flower
ペットに関するトラブル予防法務やペットのための信託などを専門に活動。保護施設から譲ってもらった5才になる雑種犬を飼っています。