【獣医師】ワクチン接種で、愛犬のどんな感染症が予防できるの?
2016-08-28
記事監修:らいおん動物病院 院長:相原博行
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経歴:1970年愛媛県生まれ。 酪農学園大学獣医学部卒業後、愛媛県庁で2年勤務、大阪と高知でそれぞれ2年の勤務医を経て開業に至る。
あなたも、愛犬に年に一回ワクチン接種を行っていると思いますが、なぜ、ワクチン接種が必要なのかを考えた事はありますか?
なんとなく、接種するように言われているから…と言う人もいるかもしれませんが、ワクチンは大事な愛犬を感染症から守るために必要な物なので、どのような感染症をワクチンで予防しているのかご紹介致します。
【犬ジステンパー】
ワクチンを接種していない1歳未満の子犬の発症率が高い感染症です。
発症初期は、咳や鼻水などの呼吸器系の症状が特徴的ですが下痢や嘔吐などの消化器系症状も示すことがあります。後期になると痙攣などの神経症状が現れ高熱を出します。
成犬が感染すると痙攣などの神経症状だけが現れる事があり、経口感染する感染力の強いウイルスで死亡率も高くなっています。
【犬パルボウイルス】
パルボウイルスは腸管細胞や骨髄細胞で増殖し、突然心不全や呼吸困難になる心筋炎型と、下痢や嘔吐、脱水症状を起こす腸炎型があり、白血球の減少が特徴的です。こちらも死亡率の高い感染症です。
感染すると、激しい嘔吐を起こし下痢はだんだん血液が混ざった粘液状になります。下痢と嘔吐のため脱水状態になり衰弱します。このウイルスは体外に出ても温度差に対応するので、便や嘔吐物にウイルスがいる場合お散歩中に接触してしまったら感染してしまいます。
【犬伝染性肝炎(アデノウイルスⅠ型)】
肝炎を特徴とし、1歳未満で高い感染率と死亡率があります。ウイルスは経鼻や経口感染します。扁桃からリンパ、そして血液へ入り全身へ回ります。
感染すると早い段階で嘔吐や下痢、高い発熱が現れます。さらに扁桃の腫れや粘膜の充血、出血も見られます。重症だと1日以内に死亡する例もある感染症ですが、逆に軽い発熱程度などほとんど症状が見られないものまであります。
回復に向かっている時に一時的に角膜に混濁が見られるのも特徴です。
【犬伝染性喉頭気管炎(アデノウイルスⅡ型)】
呼吸器系の感染症で、犬の「風邪」です。症状も乾いた咳や微熱など風邪の症状が出ます。このウイルス単体での死亡率は高くありませんが、他のウイルスと混合感染すると症状も重くなります。経路は感染犬との接触や経口・経鼻感染です。
【犬パラインフルエンザウイルス】
くしゃみや咳による飛沫感染で風邪のような症状がでます。こちらも単独感染では症状は軽いのですがアデノウイルスⅡ型などと混合感染をすると症状はより重くなります。
【犬コロナウイルス】
ウイルス性腸炎です。下痢や嘔吐を起こすので脱水症状に注意が必要です。犬パルボウイルスとの混合感染が多くその場合は症状も重くなります。
【犬レプトスピラ】
年齢は関係なくみられる感染症ですが、とくに3~4歳のオスに多くみられる感染症です。
レプトスピラ症は不顕性型・出血型・黄疸型と分れています。
・不顕性型は特に症状が出ないまま自然治癒するタイプで、ある程度の期間尿から菌を排泄するので他の動物への感染源となります。
・出血型は発熱の後、食欲不振や口粘膜の点状出血、嘔吐や下痢などの症状が出て高い死亡率があります。
・黄疸型は出血型と症状は似ていますが、始めから出血症状と黄疸がみられます。突然発症し、こちらも高い死亡率があります。
・病原菌の種類や症状の違いで『黄疸出血型・カニコーラ型・ヘブドマディス型』の3種類のワクチンで対応しています。
いかがでしたか。
ワクチンでこれだけの感染症から愛犬を守る事ができます。しかし体調によっては接種できなかったり、副作用が出たりしますので、種類が多いのが一番良いわけではありません。
地域によって感染する機会の多い病気に違いがありますので、愛犬の状態や体調を考慮して獣医さんとよく相談して最適なワクチンを接種してあげてください。