【獣医】犬の発情・生理(発情出血)の期間はどれぐらい?症状と対処法
2016-10-20
記事監修:アイリス犬猫病院 獣医師中村匡佑
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大切なご家族の一員である動物を一番よく知っているのは飼い主様であり、飼い主様からしっかりと話を聞き、大切なご家族のため、どんな事でもしっかりと話し合い決定していく。この当たり前の事を徹底し、皆様との信頼関係を大事に、地域のホームドクターとして皆様のお役に立つ事が出来れば幸いです。
ワンちゃんに生理ってあるの?どんな症状が出るの?など初めてワンちゃんを飼い始めた人や今までオスしか飼ったことのない人は分からないことがたくさんありますよね。
ワンちゃんにも人間で言う生理の様な症状はありますが、厳密にはワンちゃんの発情出血(生理)と人間の生理は大きく異なります。
ここではワンちゃんの発情と発情出血(生理)について、発情期間、症状、メス特有の病気など幅広くご紹介します。知識をつけることでワンちゃんの病気を予防出来たり、望まない妊娠を避けることができます。ワンちゃんの目には見えない体の変化を知ることで、知らなかった、と後悔することを避け、楽しい愛犬との生活を送ることができますよ。
犬の発情はいつから起こるの?
ワンちゃんの発情は、生後6カ月から10ケ月ほどで起こるといわれています。中でも小型犬は早くなる傾向があり、生後5か月程度で発情出血(生理)が見られる場合もあります。大型犬は逆に遅く、生後1歳ほどに発情出血が起こる場合もあります。
個体差によりますので、このワンちゃんは何カ月ごろからと決まっていません。
ちみなに、ワンちゃんに閉経はありませんので、基本的に老犬でも発情も発情出血(生理)も起きます。ただ、ホルモンのバランスなどにより発条の時期や出血の量や期間がバラバラになり、閉経したと感じる飼い主さんが多いようです。
その場合はもしかしたら卵巣の問題や子宮の疾患があるかもしれませんので、一度動物病院に相談をしてみても良いかもしれません。
犬の発情期間
ワンちゃんの発情は年に1~3回程度あります。大型犬より小型犬の方が回数は多いです。ワンちゃんの発情は「発情前期」、「発情期」、「発情後期」、「無発情期」の4つの時期に分けられます。
発情前期
発情前期は約10日間続きます。症状としては、陰部が腫れたように膨らみ、出血が起こります。ワンちゃんの行動も普段とは少し変わり、ソワソワしたり、興奮しやすくなります。他にも食欲不振、頻尿などの症状もでてきます。
この時期はまだオス犬を許容する状態ではないのですが、尿中のフェロモンを感じ取り、オス犬などにしつこく追いかけまわされたり、とびつかれるなどの危険性があります。メス犬も興奮しやすく気が立っている事もあり、散歩中など喧嘩に発展してしまう可能性がありますので、十分注意しましょう。
発情期
発情期は約10日間続きます。次第に出血も少なくなり発情期に入ります。オスを許容できる状態になります。発情期に入り、2~3日ほどで排卵が起こり、排卵日の前後5日間が妊娠可能期間となります。
妊娠を望まない飼い主さんは極力オス犬との接触を避けるよう、散歩の時間を変更するなどの対策を取りましょう。室外飼育をされている場合はこの期間の交配は妊娠の可能性がある時期ですので室内飼育に変更するなどしてみましょう。
発情後期
排卵後妊娠可能期間が過ぎると、発情期は終了します。その後約70日間の発情後期に突入します。陰部の腫れは引き、妊娠が成立したメス犬は妊娠期、出産の準備に入ります。
犬は黄体ホルモンも分泌が長く続くため偽妊娠が起こりやすく、妊娠が成立しないメス犬も妊娠し多様な症状がでる事があります。多くは自然に収まりますが、長くその状態が続くようであれば動物病院を受診してみましょう。
無発情期
次の発情が来るまでの期間を無発情期といいます。この頃にはホルモンの分泌もおさまります。
妊娠を望まない、発情のストレスをなくしたいなどの理由から避妊手術を考えられる飼い主さんはこの時期に動物病院の獣医さんに相談し、手術を行うようにしましょう。
犬の発情中の症状は?
元気がなくなる、食欲が落ちるなどの症状がでることがあります。発情中はワンちゃんの精神面も不安定になります。興奮しやすく、怒りやすくなったり、ソワソワし落ち着きがなくなる場合もあります。敏感なワンちゃんだとぐったりしてしまう場合もあります。
ほとんどの場合は発情期が落ち着けば元に戻りますが、無発情期に入ってもおさまらない場合は動物病院を受診しましょう。
発情中・発情出血(生理)の対処法は?
発情中の対処法としてはストレスをあまりかけないようにオス犬との接触を控えましょう。オス犬もメス犬にとってもストレスがかかる時期ですので、双方のために散歩の時間を変えるなどしましょう。
他にも寝床を暖かくしてあげましょう。ブランケットを1枚入れてあげるなど、冷えないような対策もしてあげましょう。
発情出血(生理)で汚れが気になる方はワンちゃん用のおむつを着用させてあげましょう。ただし、普段より洋服になれていない子はストレスになります。他にも蒸れて炎症を起こす場合もありますので頻繁に清潔なものに取り換える必要があります。
犬の妊娠を望まない場合は?
妊娠を希望していない飼い主さんには避妊手術をお勧めします。もちろん、避妊手術を行うことによりメリット、デメリットもあります。1度手術してしまえば、妊娠することはできませんのでしっかり考えてから決断しましょう。
メリットは発情によるストレスの軽減、望まない妊娠を避けることができる、メス特有の病気を予防することができます。
デメリットとして肥満、ホルモンのバランスの乱れによる性格のオス化、尿失禁などの症状が増えるといわれています。
知っておきたいメス犬特有の病気
子宮蓄膿症
避妊手術をしていない6.7歳以上のメス犬に多くみられる病気です。発情後子宮内の環境が変化した際に病原菌が侵入し、細菌感染し発症します。その名の通り子宮に膿が溜まる病気です。
多飲多尿、お腹が膨らんできた、嘔吐、発熱、ぐったりしているなどの症状がでます。放置すると2,3日で死に至る恐ろしい病気ですので、早めの動物病院での処置が望まれます。
治療法は基本的に開腹し、膿が溜まった子宮を身体から取り出す手術を行います。発症してから時間が立ってからの手術は体力も消耗していてにもかなり危険な手術となり、手術に成功しても合併症を発症することもあります。
予防策は避妊手術を行うことです。子宮蓄膿症は6・7歳から発症する可能性が高い病気です。年をとればとるほど避妊手術のリスクも高くなりますので、早めの手術をお勧めします。
乳腺腫瘍
乳腺に腫瘍ができる病気です。良性腫瘍と悪性腫瘍があり、確率は半々で50%の確率で悪性腫瘍と言われています。好発年齢は8~10歳の高齢期に発症します。症状としては乳腺部のしこりやお腹を触るのを嫌がる、食欲不振などです。
治療法は良性腫瘍の場合は外科手術で切除し経過観察ですが、悪性腫瘍の場合は外科手術や抗がん剤などの化学療法などです。
予防法としては初回発情前の避妊手術が有効とされています。初回発情前の避妊手術では発症率は0.5%、1回発情後の避妊手術での発症率は8%、2回目以降の発情後の避妊手術での発症率は26%でそれ以降は大差ないようです。
メス特有の病気に関しては避妊手術が予防策としてあげられますが、避妊手術が他の病気のリスクを高めることもありますので、メリット・デメリットを把握したうえで決断していただければと思います。
犬の発情・発情出血(生理)についてのまとめ
ワンちゃんの発情の期間など、ご自身で調べなければ知る機会はほとんどないと思います。発情には発情出血が起きる時期、妊娠しやすい時期などほかの犬との接触に注意しなければいけない時期があります。
発情出血(生理)の時期はワンちゃんと飼い主さんに少なからずストレスを与えるものです。ワンちゃんの性格によっては避妊手術を検討してもいいのかもしれません。
ただ、避妊手術には賛否両論ありますので、一概には言えません。ワンちゃんの生理と上手に付き合うか、避妊手術を行うか決めるのは飼い主さんですので、ワンちゃんの性格を知り、メリット・デメリットをよく知ることが大事だと思います。
愛犬とずっと一緒に、長生きしてほしいと思うのが飼い主さんの願いですよね。発情を知り、メス特有の病気を知ることでワンちゃんのストレスを軽減し、ワンちゃんの健康・長寿に繋げることができでしょう。