【獣医師】愛犬の歯周病を防ぐために今日からできる4つの方法
記事監修:アイリス犬猫病院 獣医師中村匡佑
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大切なご家族の一員である動物を一番よく知っているのは飼い主様であり、飼い主様からしっかりと話を聞き、大切なご家族のため、どんな事でもしっかりと話し合い決定していく。この当たり前の事を徹底し、皆様との信頼関係を大事に、地域のホームドクターとして皆様のお役に立つ事が出来れば幸いです。
記事の概要:
最近うちのワンちゃん口臭が…頬が腫れてる気がする…口周りを触るの嫌がって口の中を見たことがない…なんて事ありませんか?もしかしたら歯周病の疑いがあるかもしれませんよ。
歯周病が進行すると、皮膚の炎症が起こり、目の真下の顔の頬が腫れ、頬から膿がでるなどの目に見える症状が出てくることもあります。
そんなワンちゃんの歯周病を防ぐために、今日からできることをご紹介しますので、ワンちゃんの歯周病を防いで、楽しい生活を送ってください。
ワンちゃんの口腔について
犬の歯の構造と、人間の歯の構造の違い
人間は正常、永久歯の本数が(親知らずを抜くと)28本、乳歯は20本生えます。ワンちゃんの小さい口の中、何本の歯が生えていると思いますか?実は、成犬の永久歯は42本、子犬の乳歯は28本も生えているんです。さらにこの本数は口の大きい大型犬も口の小さい小型犬も同じ本数生えています。中には欠歯といって歯がなかったり、過剰歯といって多く生えている場合もあります。
大型犬にくらべ小型犬の小さい口に歯が密に生えていますので、歯垢が溜まりやすく、人間と違いワンちゃんの口腔トラブルは『歯周病』が一番多く、3歳以上の成犬のうち80%が生じているといわれています。
口臭の原因は歯周病かも?
最近うちのワンちゃん口臭が・・・、頬が腫れてる気がする・・・、口周りを触るの嫌がって口の中を見たことがない・・・なんて事ありませんか?
もしかしたら歯周病の疑いがあるかもしれません。
ワンちゃんの歯周病について
歯周病になる原因とは?
1、歯肉炎の発症
歯肉炎とは文字通り歯肉の炎症のことです。食事をとると、唾液が分泌されます。唾液中の糖タンパクが歯の表面に付着します。その上に口腔内細菌が付着し、歯垢(プラーク)となります。歯垢(プラーク)が歯に付着してから6~8時間で歯肉に炎症が起こります。
さらにこの状態のまま放置してしまうと、さらに歯垢が重なり厚くなり、さらに歯肉に炎症が起こり、最終的に歯肉ポケットができます。
2、歯石ができる
歯垢に唾液中のカルシウムなどが取り込まれると石灰化し、歯石ができます。犬の場合、人間よりも唾液のアルカリ度が強いため歯垢が歯石になるスピードが早く、3日もかからないといわれています。
さらに歯石は表面に凹凸があるため歯垢がつきやすく、その歯垢が歯石になり、どんどん歯石の層が厚くなっていきます。
3、歯周炎の発症
歯肉ポケットに歯垢・歯石が蓄積し、歯肉の炎症が進みます。歯肉ポケットの溝がより深くなります。歯肉の炎症が進行し、歯肉は後退、歯根(歯の根っこの部分)の露出や歯を支える骨の吸収が起こります。歯根の露出まで行くと歯肉で支えられていた歯がグラグラとしてきます。見た目では歯石が付着しているためしっかりしていますが、歯石除去処置を行った後に歯を支えるものがなくなりグラグラすることがあります。
歯周炎が進行するとどうなるのか?
歯周炎を放置すれば、もちろんどんどん進行します。歯石は細菌の塊ですから口臭がきつくなり、食べ物を噛む際に痛がったり、しきりに前足で口をかくなど歯を気にしたります。さらに進行すると、歯根部の炎症が起こります。
症状としてくしゃみをしたときに出血したり、ちょうど歯石に触れている皮膚の炎症が起こり、目の真下の顔の頬が腫れ、頬から膿がでるなどの目に見える症状が出てきます。最終的には歯を支える土台の骨が溶け下顎の骨折や、歯の血管から細菌が全身へと運ばれ心臓、腎臓、肝臓などの全身性の疾患にまで進行していきます。
家庭内でできる口腔ケアは?
歯周病が進行してしまうと病院では全身麻酔での歯石除去手術がメインとなります。もちろん全身麻酔をかけないとできませんので、老齢のワンちゃん、別の疾患があるワンちゃんなどは麻酔をかけるリスクが高いので難しい場合もあります。
そうなるまえに、家庭内でのケアをしっかり行っていきましょう。
口腔疾患の予防対策をする
1、口を触ることに慣れさせる
ワンちゃんに口周りは急所です。きちんと触ることに慣れさせておかないと歯磨きどころか、口腔内の状況を確認することができず、気が付いたら歯周病が進行していたというケースもあります。
パピーのころからワンちゃんの苦手な部分を触り慣れておく事も大事なことです。成犬でも噛みついてこないようだったら少しずつ触る回数を増やしたりし徐々に慣れさせることもできるので諦めずに根気よく続けましょう。
2、歯磨きを行う
歯石になるまでに行うのがポイントです。歯石は歯磨きではとれませんが、歯垢はとれます。ワンちゃん用の歯磨きを用意しなくても、タオルや軍手でも代用可能です。軍手をはめワンちゃんとのふれあいを楽しみながら歯の表面を軽くこすることも効果的です。
3、おもちゃを使う
最近では口腔疾患対策のおもちゃがたくさんでています。ロープ製のおもちゃなど噛むことにより効果を発揮するものもあります。引っ張り合いが好きなワンちゃんはフェイスタオルの端に結び目を作り引っ張りあうことで歯磨き効果があります。
4、オーラルケア商品を使う
やっぱり口周りどうしても苦手、触らせてくれない、歯磨きができないという方には市販のオーラルケア商品がお勧めです。スプレータイプのものでワンちゃんの飲み水に入れることで予防できます。導入に時間がかかるかもしれませんが、口臭が軽減されたと感じるケースもある様です。歯磨きを行うより効果は薄いかもしれませんが、何もしないよりかはいいと思います。
犬の歯周病についてのまとめ
人間と同様にワンちゃんの歯も一生ものです。歯周病の予防には歯磨きが一番効果的です。さらにご飯も毎日食べるので毎日ケアが必要です。パピーのころから口周りを触る、歯磨きに慣れさせるというのは歯周病予防するためには最も大事なポイントだと思います。
口腔内のケアは一日二日で効果が出るものではありませんので、諦めず一日一日の積み重ねが大事ですね。最近では忙しい飼い主様向けのオーラルケアの商品も数多く出ていますので、試してみるのもいいかもしれません。