【獣医】愛犬が吐いてしまった時の6つの原因と対処法
2016-10-18 [記事URL]
記事監修:さいとう動物病院 獣医師:齊藤高行
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家族の一員である大切なペットのため、ご家族さまが安心して診療に望めるよう、気軽に立ち寄れ、相談できる、そんな動物病院をこれからも目指しています。
今まで元気に遊んでいたのに急に愛犬が吐いてしまった、そんな経験ありませんか?ここではワンちゃんの「吐く」という行動について、愛犬が吐いてしまった時の原因、対処法をご紹介いたします。言葉を話せないワンちゃん、吐いてしまうと焦ったり、心配してしまいますよね。そんな時に適切な対処ができ、ワンちゃんの気持ちや病気のサインをくみ取ることができるようになります。
愛犬が吐いてしまった場合
犬は吐きやすい動物だといわれています。実は健康な犬でも吐くことがあります。愛犬が吐いてしまった時に焦ってしまいがちですが、慌てず、どんなものを吐いたのか、吐く以外にも他に症状は出ていないか、何かいつもと違う行動はしてなかったかなどを観察しましょう。
嘔吐物は捨てる前に写真に残しておきましょう。すぐに動物病院を受診する際はそのものを持っていけばいいのですが、処分後に動物病院に行く場合、とても役立ちます。動物病院ではどんなものを吐いたのか詳しく説明しなければいけませんので写真があるだけで、より早く原因解明に近づくでしょう。
犬が吐く原因は?
1、ストレス
犬も人間同様ストレスで胃炎などの症状が出ることがあり、吐くことがあります。ストレスといっても様々なものが原因となります。
例えば、引越し、同居犬との相性、飼い主さんの生活スタイルの変化などの「環境の変化」も原因の一つです。他にも、「乗り物酔い」もあり、車や電車が苦手な犬はできるだけ乗り物を避けるか、できるだけキャリーケースなどが揺れないように工夫するなどしてみましょう。
一緒に車で旅行に行きたいという方もいらっしゃると思います。そういう場合は動物病院の獣医さんに相談してみましょう。
2、食べ物
食べ物の場合も原因が様々あり、単純にお腹が減りすぎて吐くことがあります。他にも待ちに待ったご飯で急いで食べすぎて吐く場合、ご飯を与えすぎて吐く場合があります。お腹が減りすぎて吐く場合は食事の回数を増やしてあげましょう。
急いで食べ過ぎる場合は1回分を与えるときに全量出すのではなく少しづつ足していきましょう。与えすぎてしまう場合は1日量をしっかり計算し、間食などを控えるようにしましょう。いずれの場合も肥満対策のために1日の食事量をしっかり守りましょう。
人間の食事中に欲しがるために与える方もいらっしゃいます。脂っこいものや人間の食事は味が濃い場合もありますので、犬のために犬の健康を考え作られたものやドッグフードなど専用の食事以外はむやみに与えないほうがよいでしょう。
3、異物
おもちゃや消化できないものや食べてはいけないものを飲みこんでしまった場合、胃に詰まり、胃や腸の動きが鈍くなり嘔吐することがあります。完全に腸を塞いでいる完全閉塞の場合と完全に塞いでいない不完全閉塞の場合があります。
催吐処置をし、吐かせることもできますが、異物の大きさや、飲みこんだ物によっては催吐処置をできないこともあります。内科的処置ができない時はお腹を開けて手術で摘出します。放置すると悪化し最悪死亡するケースもありますので、何か食べてしまった場合は必ず動物病院に連絡し、受診しましょう。
パピー期はなんでも噛んだり好奇心旺盛です。その時期は特にワンちゃんの届くところに物を置かないようにしましょう。
4、薬物
ハイターなどの漂白剤、除草剤、農業用の薬品など様々なもので薬物中毒になる可能性があります。ワンちゃんは思いもよらないところに入ることがありますので、薬品の管理には注意が必要です。薬物中毒の疑いがある場合は、動物病院に連絡し、飲んでしまったかもしれない物も必ず持参し、すぐに受診しましょう。
5、感染症
犬パルボウイルス感染症では激しい嘔吐・下痢を引き起こします。免疫力の低い子犬や老犬に感染すると重篤な症状がでます。感染力が非常に高い感染症ですので、感染犬の便や吐いた物の処理は厳重に行い、消毒もしっかりしないといけません。
他にも、犬コロナウイルス感染症(コロナウイルス性腸炎)ではウイルスが消化管に感染しますので、腸炎を引き起こします。子犬に感染すると下痢や嘔吐の消化器症状が現れます。
感染症が原因のものは動物病院でしっかりした治療が必要になります。
6、病気
単純に消化器が原因の場合です。胃炎やウイルス性腸炎、細菌性腸炎などがあります。消化器疾患の場合は吐く症状の他に、便秘・下痢症状が出ることがあります。
消化器以外にも、他の臓器が原因で症状が出ることがあります。消化器で原因がわからない場合は肝臓、腎臓、副腎などの臓器に原因があるかもしれません。血液検査や超音波検査などの検査が追加で行われる場合があります。特に老齢のワンちゃんの場合は病気が潜んでいる場合がありますので、しっかり検査してもらうといいかもしれません。
犬が吐いてしまった時の対処法
2,3回短時間に吐くようでしたら念のため動物病院を受診した方がいいかもしれません。1度吐いてから元気があり吐く様子がなく、いつもと変わらないようでしたら様子を見てもいいかと思います。自宅でも対処法をご紹介いたします。
安静にしてあげる
1日は安静にしてあげましょう。寝床に暖かいブランケットをひいてあげたり、お散歩は控えるか、外でしかトイレをしないワンちゃんは距離を短くして散歩するなど体調を見ながら臨機応変に対応しましょう。
さらにワンちゃんが休んでいるときはしっかり休ませてあげましょう。むやみに触ったり、声掛けして起こしたりするのはやめましょう。
食事内容変更
未消化のご飯を吐いた場合は胃腸が弱っている可能性がありますので、半日絶食し、いつもの半分か3分の1量をふやかして与えましょう。絶食後の食事はまた吐いてしまう事がありますので様子をしっかり見てみましょう。もし、吐いてしまった場合は動物病院を受診しましょう。
黄色い胃液の様なものを吐いた場合は空腹が原因の可能性がありますので、1日分を頻回に分けて、少量ずつ与えましょう。ふやかして与えることにより水分補給もできます。元々水をあまり飲まないワンちゃんはふやかして与えると脱水対策になります。
必要に応じて動物病院に受診する
吐いた日は元気で過ごしていて様子を見ていたが、次の日様子がおかしいなどあれば、自己判断せず、動物病院に連絡し、獣医さんに相談しましょう。いつもより食欲がない、元気がないなど普段と違う様子がある様でしたら一度、動物病院を受診しましょう。
ワンちゃんが吐く原因はたくさんあり、一見元気でも病気が隠れている場合もあります。ワンちゃんの健康のためにも1年に1度健康診断を受診することを視野に入れてもいいのかもしれません。
犬が吐いた時には病院に連れて行ったほうがいいの?
様子を見てもよい場合
食べ過ぎ、空腹、ストレスなどが原因の場合は一過性の嘔吐の可能性が高いです。吐いてから半日から1日吐いていない、元気、食欲などいつもと変わりない場合や、吐いた時間が朝早くで黄色い胃液の様なものだった場合は、少し自宅で様子を見てみましょう。
病院に連れて行った方がよい場合
短時間に何度も吐く、食事をしても吐く、下痢をしている、なんだかいつもより体が熱い(発熱)、ぐったりしているなど様子がおかしい場合は迷わずに動物病院に連絡し、受診しましょう。
吐く回数が増え、水分摂取がでない状況が続くと脱水状態になってしまいます。経口摂取が難しい場合は動物病院での点滴が必要になります。ひどい場合は入院するときもありますので、早めの受診をお勧めします。
犬が吐いてしまった時の対策まとめ
ワンちゃんが吐く原因はたくさんあり、不安になる事もあるかと思いますが、一過性の嘔吐・病院に連れていったほうが良い嘔吐など見極めることができます。どちらなのか分からない場合も動物病院を受診してみてもいいでしょう。個体差で吐きやすいワンちゃんや滅多なことでは吐かないワンちゃんなどいますので、そのワンちゃんの個々の体質などを知ることも大事なことです。
もし吐いてしまっても、原因を知ることで自宅でのどんなケアを行った方がいいのか、どんなご飯を与えたらよいのか知ることができます。
ワンちゃんから飼い主さんへ向けたサインを見逃すことなく、よりよいワンちゃんとの楽しい生活を送れるでしょう。